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 ■熟年離婚時の年金分割−>損得は如何に?

  平成19年4月より、離婚時の年金分割制度がスタートしましたが、最近、統計では離婚件数の大幅な増加はなかったようです。 年金分割に関する情報は、書物でもインターネット上でも色々な情報提供が行われていますが、年金分割を実際行った場合、年金受給額はどのようになるのか試算したものは、私が接した情報の範囲ではありませんでした。

 今回、「夫の定年を機に、熟年離婚をした場合の年金受給額はどうなるか?」ということで、勝手にモデルケースを設定して、概算で試算してみました。

1.前提条件

 @ 夫    昭和23年生まれ、60歳、会社員、厚生年金に38年加入
 A 妻    昭和26年生まれ、57歳、専業主婦、結婚前に厚生年金に5年加入、
         結婚後は国民年金に30年加入
 B 婚姻期間 30年
 C 夫の厚生年金受給額 : 10万円/月
 D 妻の厚生年金受給額 :  1万円/月
 E 夫    78歳で死亡
 F 妻    85歳で死亡

2.離婚しないで、寿命をまっとうした場合

@ 夫の年齢別受給額
     
▼60歳 ▼64歳 ▼65歳 ▼68歳 ▼78歳(死亡)
   厚生年金(報酬比例部分)   厚生年金(報酬比例部分)   厚生年金       厚生年金     
厚生年金(定額部分) 基礎年金 基礎年金
加給年金 加給年金
  
比例:120万円×4年  比例:120万円×1年 厚生:120万円×3年    厚生:120万円×10年  
定額:72万円×1年 基礎:72万円×3年 基礎:72万円×10年
加給:40万円×1年 加給:40万円×3年
 
小計:480万円 小計:232万円 小計:696万円 小計:1,920万円 累計:3,328万円
月額:10万円 月額:19.3万円 月額:19.3万円 月額:16万円

A 妻の年齢別受給額

▼60歳 ▼63歳 ▼65歳 ▼75歳 ▼85歳(死亡)
   厚生年金(報酬比例部分)   厚生年金(報酬比例部分)   厚生年金       厚生年金     
厚生年金(定額部分) 基礎年金 遺族厚生年金
振替加算 基礎年金
   振替加算
  
比例:12万円×3年  比例:12万円×2年 厚生:12万円×10年    厚生:12万円×10年   
定額:9万円×2年 基礎:72万円×10年 遺族:78万円×10年
振替:7.6万円×10年 基礎:72万円×10年
振替:7.6万円×10年
 
小計:36万円 小計:42万円 小計:916万円 小計:1,696万円 累計:2,690万円
月額:1万円 月額:1.8万円 月額:7.6万円 月額:14.1万円

3.夫の定年を機に熟年離婚した場合

 ・分割対象期間         婚姻期間の30年間
 ・分割対象金額         120万円×30年/38年=94万円
                    (実際は、婚姻期間の標準報酬額を分割します。)
 ・分割割合            50:50
 ・夫の分割後厚生年金額   73万円/年(47万円+26万円(婚姻前))
 ・妻の分割後厚生年金額   59万円/年(47万円+12万円(婚姻前))

@ 夫の年齢別受給額

▼60歳 ▼64歳 ▼65歳 ▼68歳 ▼78歳(死亡)
   厚生年金(報酬比例部分)   厚生年金(報酬比例部分)   厚生年金       厚生年金     
厚生年金(定額部分) 基礎年金 基礎年金
加給年金:なし 加給年金:なし
  
比例:73万円×4年  比例:73万円×1年 厚生:73万円×3年    厚生:73万円×10年  
定額:72万円×1年 基礎:72万円×3年 基礎:72万円×10年
 
小計:292万円 小計:145万円 小計:435万円 小計:1,450万円 累計:2,322万円
月額:6.1万円 月額:12.1万円 月額:12.1万円 月額:12.1万円
月額:10万円 月額:19.3万円 月額:19.3万円 月額:16万円 <−分割前月額
月額:▲3.9万円 月額:▲7.2万円 月額:▲7.2万円 月額:▲3.9万円 増減

A 妻の年齢別受給額

▼60歳 ▼63歳 ▼65歳 ▼75歳 ▼85歳(死亡)
   厚生年金(報酬比例部分)   厚生年金(報酬比例部分)   厚生年金       厚生年金     
厚生年金(定額部分) 基礎年金 遺族厚生年金:なし
振替加算:なし 基礎年金
   振替加算:なし
  
比例:59万円×3年  比例:59万円×2年 厚生:59万円×10年    厚生:59万円×10年   
定額:9万円×2年 基礎:72万円×10年 基礎:72万円×10年
 
小計:177万円 小計:136万円 小計:1,310万円 小計:1,310万円 累計:2,933万円
月額:4.9万円 月額:5.7万円 月額:10.9万円 月額:10.9万円
月額:1万円 月額:1.8万円 月額:7.6万円 月額:14.1万円 <−分割前月額
月額:3.9万円 月額:3.9万円 月額:3.3万円 月額:▲3.2万円 増減

4.年金受給累計額

離婚しない場合 離婚した場合 増 減 年額増減 月額増減 受給期間
3,328万円  2,322万円 ▲1,006万円 ▲56万円/年 ▲4.6万円/月     18年
2,690万円 2,933万円 243万円 9.7万円/年 0.8万円/月 25年
合 計 6,018万円 5,255万円 ▲763万円 ▲30.5万円/年 ▲2.5万円/月 25年

差異要因

@ 夫の報酬比例部分   ▲846万円=47万円×18年
A 夫の加給年金      ▲160万円=40万円×4年
B 妻の報酬比例部分   1,175万円=47万円×25年
C 妻の振替加算      ▲152万円=7.6万円×20年
D 妻の遺族厚生年金   ▲780万円=78万円×10年

5.考察

@ 年金の制度設計が夫婦を単位としているため、離婚すると優遇されている加給年金、振替加算、
  遺族厚生年金などの受給権利を失い、年金受給額が減少する。

A 夫の年金額の減少が大きく、経済的に厳しい老後を過ごすおそれがある。

B 熟年離婚は、国の年金財政に貢献するケースが多くなるのではないかと推測される。


各個人毎の正しい年金額を知りたいときは、最寄の年金事務所にお問合せください。