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 ■遺言による保険金受取人の変更

  平成22年の4月1日より施行された保険法により、遺言による保険金受取人の変更が可能となったので、ご紹介します。

  まず、保険法について、簡単に触れておきたいと思います。 保険契約に関する商法第2編第10章に規定する法制を見直し、社会経済情勢の変化に対応したものとするため、保険契約に関する法整備を行われ、「保険法」として独立した法律になりました。

  商法の規定は、明治32年の商法制定後、明治44年に一部の規定が改正されただけで、なんと約100年間も実質的な改正がされていませんでした。 時代と共に、新しい保険商品が次々と発売されてきましたが、平成の今まで何故改正が必要なかったのか不思議です。

  ここから本題ですが、従前の商法において、遺言による保険金受取人の変更に関しては、明記されていませんでした。 このため、保険契約者が遺言で保険金受取人の変更した場合、規定がないために見解が分かれていました。 今回、保険法に明記することにより、立法的に解決が図られました。 今回の見直しで明記されたということは、問題となるケースが多かったのでないかと推察されます。

  参考までに、関係条文である第四十四条をご紹介します。

(遺言による保険金受取人の変更)
第四十四条 保険金受取人の変更は、遺言によっても、することができる。
2 遺言による保険金受取人の変更は、その遺言が効力を生じた後、 保険契約者の相続人がその旨を保険者に通知しなければ、これを もって保険者に対抗することができない。

  保険金受取人の変更は、契約者本人が生命保険会社の窓口に出向き、手続きを行うのが一般的です。 しかし、何らかの事情により、遺言によって保険金受取人を変更するときは、遺言書にて変更することになり、このとき、重要なのがどのような遺言書を作成しておくかです。

  一般的な遺言書の作成方法としては、自筆証書遺言、公正証書遺言、秘密証書遺言などがあります。 遺言者が自筆で作成する自筆証書遺言は、遺言書自体が民法の所定の要件を満たしていることが必要であり、形式不備などで遺言書が無効となるおそれがあります。 遺言書が無効になれば、当然、保険金受取人の変更も無効になります。 このような問題を引き起こさないために、公証人の手数料が必要となりますが、公正証書による遺言書の作成をお勧めします。

  また、遺言書の記述内容があいまいですと、無用な相続争いに発展する可能性があります。 複数の保険に加入しているときは、保険毎に保険金受取人を明確にしておくべきです。 また、1つの保険について、複数の保険金受取人を指定する場合は、遺言書に受取人毎の分割割合を記載することを忘れないように注意する必要があります。

  日本においては、生命保険の世帯加入率が90%を超えており、「保険大国」となっています。 今回の保険法の施行により、誰でも遺言によって、安心して保険金受取人の変更ができるようになりましたが、いくら遺言と
は言え、保険証書に記載されている従来の保険金受取人にとって、感情的に納得できないケースが発生することも想定されます。 遺言書を読んで、「嘘だろう!」と叫ぶ相続人も現れるかもしれませんね。

  その他の見直し点で身近に聞く問題としては、被保険者の告知義務違反による保険金の不払いがよく問題となっていますが、今回の見直しにより、告知制度については、告知義務が自発的申告義務から質問応答義務に変わりました。 今までは、被保険者に義務を負わせていましたが、これからは、保険会社が義務を負うことになりました。 保険の知識レベルが低い加入者にとって、負わされていた告知義務から解放されたことは、大きな前進だと思います。